広報くまとり 令和5年1月号第860号 4,5,6,7ページ ☆特集 ●伝統を紡ぐ 熊取を含む泉州一帯は、もともと綿業が盛んな地域として知られており、熊取町でも綿花栽培や木綿織物が盛んでした。かつて織物業の工場が熊取に150軒ほどもあり、織物をする音で目が覚めたという住民も多かったようです。 煉瓦館もまた、昭和初期に建設された綿布工場を保存再生した建物で、工場の雰囲気が残っています。 高度経済成長期以降、オイルショック・円高不況を受け繊維産業は縮小していきましたが、今もなお熊取町で織物の伝統を伝え、製作している方たちを紹介します。 写真1、2枚目 昭和初期の綿工場 写真3枚目 昔の中林綿布工場(煉瓦館) 写真4枚 現在の煉瓦館 ○織物はたくさんの工程を経て商品になります 1. 原糸開封 織物の発注を頂いてから品物の規格をたて、必要な糸量を紡績メーカーから仕入れる。 2. 荒巻工程 糸の長さや張力を揃え、1つのビームに巻き取る工程。工場によっては、整経や荒巻整経などと言う場合もある。 3. サイジング工程 巻き取ったビームを合わせ、規格の本数の糸シート状にしたものを糊付けする工程。糊を付けることにより強度が増し、製織時の織効率を上げる。 4. ドローイング 織機で織る際に規格に基づいた仕上がりになるよう、ドロッパやヘルドといった部品に縦糸を通す工程。 5. 製織工程 横糸も織機にセットし、キバタ(生機)※を織る。横糸の素材や、本数が少し変わるだけで全く別のものの生地が仕上がるため、お客様のニーズにあった多種多様な物を作ることができる。 ※キバタ(生機)…糸から織った布で染色・仕上げ加工される前の布のこと。 6. 検反 製造した品物に、異常がないかチェックする。 7. 出荷 梱包し、染色工場へ出荷する。 ○織物を伝える 菅野 正子 さん 織物が好きで、50代の頃から工房で学び、約20年前に指導者の資格を取得。 織物の楽しさを皆さんに伝えたい 自宅の敷地内に、手織り・手作り屋「和(なごみ)」を作り、ここで作業をしたり教室を開いたりしています。 織る際、1本1本の糸がよった時にみんなが仲良しに見えるのが織物の魅力の一つだと思っています。 洋服やかばんなどの作品を作ることが好きで、高齢者の方々にも着ていただけるような服を作りたいと思っています。 また、織機のペダルを踏むことで足の運動にもなるので、高齢者の皆さんにも織物に挑戦してほしいです。 コロナ禍の3年間、医療従事者の皆さんにプレゼントした手織りのマフラー。 ○担い手に聞く 織物の音 そこで働く人々の汗 熊取町の伝統を支え続ける灯火 一言で「糸」と云っても、天然繊維や化学繊維などがあり、また同じ天然繊維の中でもたくさんの種類の糸があります。それらを織って作られるテキスタイルの世界は、とても奥深いものです。 私たちは、そんな繊維の特質を見極め、湿度などの色々な条件を考慮し、機械や道具の細部にもこだわり、価値のある製品を作り続けています。 しかしながら、最近では日本で作られた生地が、海外で縫製されることが多くなり、その製品の製造地が海外となってしまい、日本のテキスタイルを伝えることが難しくなっています。 また、現在の製品は、安価または高価な物の二極化になっていますが、私たちは他社との違いを見出し、価値のある製品を精力的に作り続け、熊取のテキスタイルの魅力を次の世代に伝えたいと思っています。 橘織物株式会社 常務取締役 橘 賢一郎 さん 熊取町で生まれ育ち、19年間織物一筋の職人。 だんじり祭り・子育てにも、力を注いでいます。 ○未来につなぐ 社会科の授業の一環として工場見学に 毎年、中央小学校と東小学校の3年生が社会見学に来られます。 織物の歴史やどうやって織物ができるのか、私たちの思いなども伝えています。 織物工場での仕事は、技術や経験が必要ですが、自分の企画したものが製品化された時などは、すごく嬉しく、やりがいを感じることができます。 橘織物熊取本社では、30から40人の従業員が働いています。 工場での作業は、誰でもすぐにできるものではありませんが、洋服に興味がある、細かい作業が好きという子はぜひ、織物業に興味を持ってほしいと思っています。 そして、一緒にワクワクしながら仕事が出来る日がくればと願っています。 ○先人の技術を受け継ぎ繋ぐ職人に織物は、多くの工程をそれぞれ職人たちが分業して完成します。 私は、主にたくさんの工程を経た縦糸と横糸を織りキバタ(生機)にする工程を担当しています。この工場で働いて9年になりますが、微妙な調整や判断は、職人が経験し、感覚を覚えないとできません。そのためには、4、5年はかかります。織物の世界は奥が深く、基礎を大事にしながら、良いものをどうやったら作れるのか、日々、手探りで考え行動しています。 そして、積み重ねた経験を活かし、さらに特殊なことを手掛けていき、他では織れない商品を作っていきたいと考えています。そのためには、これからも技術を磨いていきたいと思います。 橘織物株式会社 製造課 工藤 拓哉 さん 〇橘織物株式会社 時代のニーズに合わせた商品作りを 創業1948年より大阪泉州に本社工場を構え、現在はAIR JET織機を38台設置し操業。さらに、大阪市と東京に営業拠点があり、商品の提案をしています。 以前は、綿織物キバタの製造・販売を行っていましたが、海外品の台頭に対応すべく平成9年よりテキスタイル販売部を設置し、時代のニーズに合わせた商品作りを続けています。 本社工場(織物事業部) 郵便番号590-0450 熊取町大宮3-926-1 電話452・1541 以上で4,5,6,7ページは終わりです。