広報くまとり 令和7年9月号第892号 2,3,4,5,6ページ ☆特集 認知症とともにこのまちで生きる ■『遠い誰かの話』ではなく『すぐそばの私の話』 高齢化が進む日本では、誰もが認知症と無関係ではいられない時代を迎えています。 年をとれば誰でも、物忘れをしたり新しいことを覚えづらくなったりしますが、そのような『加齢による物忘れ』とは違い、つい先ほど起きた出来事を全て忘れていたり、物事への興味や関心がなくなったりと、『認知症』は些細な変化から静かに始まります。 認知症の症状は人によってそれぞれで、物忘れが多いからといって認知症とは診断できません。 自己判断せず、専門医に相談することが大切です。 認知症になると、家族に迷惑をかけてしまうのではないか、自分らしさを失ってしまうのではないかと不安な気持ちになる人も多いと思います。 認知症は誰もがなる可能性があるなか、認知症になったとしても、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら、自分のペースで自分らしく暮らし続けられるような『新しい認知症観』が必要なのではないでしょうか。 周囲の理解とサポートがあれば、当事者の方も、自分の力を活かして和やかに生活を営むことができます。 今回の特集では、認知症とともに生きる方やそのご家族、地域のサポートについて紹介し、同じ地域に生きる仲間として、どのようなことができるかを考えていきたいと思います。 (注釈)写真・名前等の掲載については、本人・ご家族の同意を得ています。 ■3人に1人が認知症またはMCI 令和7年8月現在、熊取町においても人口の約3割が65歳以上の高齢者です。 厚生労働省の調査によると、2022年時点で認知症の高齢者は約443万人、MCI(軽度認知障害)の高齢者は約559万人と推計され、その合計は1,000万人を超え、高齢者の3.6人に1人が認知症・認知症予備軍と言える状況にあります。 また、2050年には高齢者の3人に1人が認知症またはMCIになると予測されています。 (注釈)令和6年5月認知症施策推進関係者会議資料より 認知症 様々な原因で脳の機能が低下し、記憶や思考などの認知機能が衰え、日常生活に支障をきたす状態。 MC(I軽度認知障害) 認知機能の一部が低下しているが、日常生活に大きな支障が出ていない状態。 ■安心して暮らせるまちであるために 熊取町は、認知症のある方だけでなく、その家族も地域で支えられ、『熊取町なら大丈夫』と思ってもらえるまちづくりを目標にしています。 そこで熊取町では、『高齢者見守りネットワーク』、『徘徊高齢者等SOSネットワーク』、『見守りシールの配布』、『ひまわりカフェ』などのサポートを行っています。 認知症を予防することはもちろん大切ですが、自分や大切な人が認知症になった時、どのようにその現実に向き合い、自分らしく生きていくかを考えることも大切です。 皆さんも仕事や普段の生活の中で、認知症のある方と接する機会があるかもしれません。そんな時に、お互いが支え合えるようなまちづくりをめざしませんか? ■暮らしを支えるサポート 地域全体で見守る 高齢者見守りネットワーク 熊取町では、高齢者の方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けていけるよう、関係機関や各種団体・地域住民などによる見守りに力を入れて取り組んでいます。 地域全体で高齢者を見守ることで、日常生活に異変などがあった場合、速やかに関係機関(地域包括支援センターや行政など)に連絡が届き、支援が必要な高齢者を早期発見・支援できる仕組みになっています。 ■行方不明になった時でも早期発見 徘徊高齢者等SOSネットワーク 認知症の方は外出した際に自分がどこにいるのかわからなくなったり、家に帰ることができなくなったりすることがあります。 そのような方が行方不明になってしまったときに、特徴などを協力者・協力機関に情報配信し、地域で協力して早期発見するしくみです。 ■もしも…のために貼って安心 見守りシール 認知症等により行方不明となる恐れのある方の衣服や持ち物に貼るシールです。 シールの2次元コードをスマートフォン等で読み込むと、警察や町の連絡先が表示されます。 その際に、シールに記入されている番号を町や警察へ伝えていただくと身元が判明し、個人情報が洩れることなく家族へ連絡される仕組みです。 対象者 『熊取町徘徊高齢者等ネットワークシステム』の事前登録者 配布数 1人につき10枚 『高齢者見守りネットワーク』や『徘徊SOSネットワーク』にご協力いただける協力機関を募集しています。 ■認知症を知るきっかけにまずは覗いてみませんか ひまわりカフェで『ほっとできるひととき』を ひまわりカフェは、認知症のご本人・ご家族・地域の皆さんが気軽に立ち寄り、交流できるあたたかな集いの場です。 専門職による相談や情報交換、参加者同士のコミュニケーションを通じて、安心とつながりを感じられる時間を提供しています。 「たくさんおしゃべりできて良かった」「気持ちが楽になった」「カフェに来ることでストレスが減っている」といった声も寄せられています。 はじめての方もお気軽に足を運んでみてください。 ひまわりカフェは自分のしたいことを自分のペースでできる空間! 日時 9月20日(土曜日)午後1時30分〜3時30分 場所 熊取ふれあいセンター 費用 無料 問い合わせ 介護保険課 電話番号452-6298 地域包括支援センターやさか 電話番号453-8330    参加者の声 第2の自分の居場所 ご家族の声(Dさん)  運転免許証の更新の際に夫は認知症ではないかと思いました。 お互いのためにデイサービスを勧めたりしましたが、夫は「絶対行かん」と頑なでした。 でも「将棋ができるなら行く!」と言ってくれ、将棋をするために通い始めました。 今ではカフェに行く日が楽しみで開いていない日でもふれあいセンターに遊びに行ったりしています。 ここに来てからは毎日イキイキして、笑顔がとても増えました。 私自身も同じ境遇の人と話をし、悩みを共有することで気持ちがすごく楽になっています。 抱え込むより誰かに話すことは大切ですね。これからも一緒に通い続けたいです。 気軽に行ける最初の場所  「もしかして認知症かも・・・」と感じた時、これからどうすればいいのか不安になることでしょう。 そんな時には、ひまわりカフェで話してみませんか?しかし、初めての場所で知らない人に話しかけるのは緊張するもの。 そこで今回は、初めてひまわりカフェに参加する十万さんとそのご家族に密着しました。  最初は緊張していた十万さんも、利用者さんに話しかけられてすぐ笑顔に!ご家族の方も「いつもは家に閉じこもりがちなので、これからここに通ってみたら?」と新しい居場所を発 見でき、少し心が軽くなられたようです。 体験者の声(十万さん) ひまわりカフェに参加してみて  孫のすすめでこのカフェを知りました。 いつもは家族とデイサービスの方との会話だけだったので、はじめましての方とたわいもない話ができて新鮮でとても楽しかったです。 はじめてでも参加しやすかったので、またぜひ参加したいと思いました。 ご家族の声 日常会話で昔のことをよく忘れているおばあちゃんはもしかして認知症かも?と気になっていました。 そんな悩みや不安をスタッフの方に相談できたことはもちろん良かったのですが、なによりおばあちゃんの満面の笑みを見て、「来てよかった」と思いました。   ■ひまわりのように温かく寄り添う チームひまわり 支援者同士をつなぎ認知症のある方やその家族を支える チームひまわりは、『チームオレンジ』の中のひとつで、ボランティアの認知症サポーターが中心となり、町や関係機関と連携しながら支援するチームです。 町が開催する『認知症サポーター養成講座』や『認知症ステップアップ講座』を受講することで、チームひまわりのメンバーとして活動することができます。 コンセプト ひ ひとりじゃないよ ま まわりの人たちと わ たすけあいの輪 り 理解ある町 活動内容(一部) ・認知症についての正しい知識の普及啓発 ・本人やご家族の困りごと支援 ・地域での見守り・声かけ (注釈)チームひまわりのことについて チームひまわりの訪問を受けた方のインタビュー(加藤さん) 外気を吹き込んでくれる 日本画を描くことが妻の趣味でした。 認知症になった今は趣味や他の物事への関心が薄れてしまいました。 いろいろなことを忘れてしまっている今でも、夜中の一時、二時頃に目を覚まし「三人の息子のご飯の準備をして、学校へ送りださなくちゃ」と言うんですよ。 主婦業から解放されていないと思うと辛いんです。 「息子どもを立派に巣立たせて主婦業は卒業!」と毎日励ましの声を掛けています。 チームひまわりの方にこんな気持ちを聞いてもらうことができました。  チームひまわりの方々が二人きりの生活に外気を吹き込んでくれます。 ボランティアの声(チームひまわり福井さん) 自分ごととして考えてほしい 熊取町介護者の会の会長として町の会議に参加する中でチームひまわりの存在を知り、誰かの役に立てればと思い参加しました。 介護士としての勤務経験や父親の介護を通して、同じ境遇の人が安心して話せる場の大切さを痛感しています。 介護保険制度が整っても、制度では埋められない『隙間』があり、その負担を家族が一人で抱えてしまうことも少なくありません。 だからこそ、誰も一人にならない場所をこの活動でつくりたいと思っています。 認知症は誰にでも起こり得るものであり、決して他人事ではありません。 自分や家族もなるかもしれないと、多くの人に『自分ごと』として考えてもらえるような活動を広げていきたいです。   ■知るきっかけに チームひまわりやボランティアに興味ありませんか? 認知症サポーター養成講座 認知症の正しい知識の普及と認知症のある方とその家族を見守る応援者を養成する講座です。 対象 町内在住・在勤の方 日時 9月18日(木曜日)午後1時30分〜3時 場所 熊取ふれあいセンター1階 内容 認知症ってどんな病気?、認知症の治療と予防    認知症の方との接し方、サポーターの役割等について 定員 先着20人 申込方法 9月10日(水曜日)までに電話で申し込み 問い合わせ 介護保険課 電話番号452-6298、地域包括支援センターやさか 電話番号 453-8330   以上で2,3,4,5,6ページは終わりです。